章4-第11

章4-第11

 

聴:

 

 

寿限無(長い名前の子ども)

 

あむかしむかし、あるところに、なかなか子どもが生まれない夫婦がいました。

 でもようやく、可愛らしい男の子が生まれたのです。
 お父さんとお母さんは、大喜びです。
「よし、この子には偉いお坊さんに頼んで、元気で長生き出来る、立派な名前を付けてもらおう」
 お父さんはさっそくお寺に行くと、お坊さんに頼みました。
「うむ、引き受けよう。元気で長生き出来る、立派な名前か。そうじゃなあ・・・」
 お坊さんは一生懸命考えて、ありがたい意味や長生きした人の名前をくっつけて、大変長い名前を男の子につけてくれました。
 それは、こんな名前です。

『寿限無(じゅげむ)寿限無(じゅげむ)、五劫(ごこう)のすりきれ、海砂利水魚(かいじゃりすいぎょ)の水行末(すいぎょうまつ)、雲来末(うんらいまつ)、風来末(ふうらいまつ)、食(く)う寝(ね)るところに住(す)むところ、やぶらこうじのぶらこうじ、パイポパイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命(ちょうきゅうめい)の長助(ちょうすけ)』

 さて、ある日の事です。
 その長い名前の子どもが、川へ落ちたから大変です。
 お母さんがあわてて、みんなを呼びに行きました。
「みんな助けておくれ!
『寿限無(じゅげむ)寿限無(じゅげむ)、五劫(ごこう)のすりきれ、海砂利水魚(かいじゃりすいぎょ)の水行末(すいぎょうまつ)、雲来末(うんらいまつ)、風来末(ふうらいまつ)、食(く)う寝(ね)るところに住(す)むところ、やぶらこうじのぶらこうじ、パイポパイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命(ちょうきゅうめい)の長助(ちょうすけ)』
が、川へ落ちたんだよ!」
 やっと名前を言い終わった時には子どもは川下の方へ流されてしまい、おぼれ死んでしまいました。

 ところがある日、別の子どもが川へ落ちました。
 この子どもは、『ちょい』というだけの、短い名前でした。
「みんな助けておくれ! ちょいが川へ落ちたんだよ!」
 お母さんの叫び声を聞いて畑にいる人が川に飛び込んで、すぐに子どもを助けてくれました。

 そんな事があってから、この地方ではどのお母さんも生まれた子どもには出来るだけ短い名前をつけるようになったという事です。

※寿限無・・・以下略の名前の意味。

「寿限無(じゅげむ)」とは、
 寿命に限りがなく、永遠に死なないという意味です。

「五劫(ごこう)のすりきれ」とは、
 三千年に一度、神さまの使いが天から降りてきて、地上の岩を衣でなでるのですが、その作業がすべて終わるまでの時間を一劫といい、それが五劫あるので、何万年もの時間という意味です。

「海砂利水魚(かいじゃりすいぎょ)」とは、
 海の砂利(じゃり)も、水にすむ魚も、とうてい取りつくすことができないため、それだけ数が多いという意味です。

「水行末(すいぎょうまつ)、雲来末(うんらいまつ)、風来末(ふうらいまつ)」とは、
 水の行く末、雲の行く末、風の行く末には、いずれも果てがなく、広大だという意味です。

「食う寝るところに住むところ」とは、
 衣食住を表わし、それらの全てに不自由しないようにとの、願いを込めた言葉です。

「やぶらこうじのぶらこうじ」とは、
 大変丈夫でおめでたい木の名前で、春は若葉をしげらせ、夏は花を咲かせ、秋は実を実らせ、冬は霜(しも)をふせぐと言われています。

「パイポパイポ・・・以下略」とは、
 むかし、中国にはパイポという国があって、シューリンガンという王さまとグーリンダイという王后のあいだに生まれたのが、ポンポコピーとポンポコナーという二人のお姫さまで、この二人が大変長生きをしたので、それにあやかっての言葉です。

「久命(ちょうきゅうめい)の長助(ちょうすけ)」とは、
 天長地久(てんちょうちきゅう)という言葉があり、天地が永久にかわらないように物事がいつまでもつづくと言う意味で、長久命は、それだけ命が長く続くという願いを込めて、そして最後の長助は、長く助かる、つまり、長生きできるという意味です。

 

おしまい

 

ふりがな

 

聴: 

 

 

寿限無(長い名前の子ども)

 

ああああむかしむかし、あるところに、なかなか子こどもが生うまれない夫婦ふうふがいました。

 でもようやく、可愛かわいらしい男おとこの子こが生うまれたのです。
 お
父とうさんとお母かあさんは、大だい喜よろこびです。
「よし、この
子こには偉えらいお坊ぼうさんに頼たのんで、元気げんきで長生ながいき出来できる、立派りっぱな名前なまえを付つけてもらおう」
 お
父とうさんはさっそくお寺てらに行いくと、お坊ぼうさんに頼たのみました。
「うむ、
引ひき受うけよう。元気げんきで長生ながいき出来できる、立派りっぱな名前なまえか。そうじゃなあ・・・」
 お
坊ぼうさんは一生懸命いっしょうけんめい考かんがえて、ありがたい意味いみや長生ながいきした人ひとの名前なまえをくっつけて、大変たいへん長ながい名前なまえを男おとこの子こにつけてくれました。
 それは、こんな
名前なまえです。

『
寿ことぶき限げん無む(じゅげむ)寿ことぶき限げん無む(じゅげむ)、五ご劫こう(ごこう)のすりきれ、海うみ砂利じゃり水魚すいぎょ(かいじゃりすいぎょ)の水みず行末ゆくすえ(すいぎょうまつ)、雲来うんらい末まつ(うんらいまつ)、風かぜ来らい末まつ(ふうらいまつ)、食しょく(く)う寝ね(ね)るところに住じゅう(す)むところ、やぶらこうじのぶらこうじ、パイポパイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久ちょうきゅう命いのち(ちょうきゅうめい)の長助ちょうすけ(ちょうすけ)』

 さて、ある
日ひの事ことです。
 その
長ながい名前なまえの子こどもが、川かわへ落おちたから大変たいへんです。
 お
母かあさんがあわてて、みんなを呼よびに行いきました。
「みんな
助たすけておくれ!
『
寿ことぶき限げん無む(じゅげむ)寿ことぶき限げん無む(じゅげむ)、五ご劫こう(ごこう)のすりきれ、海うみ砂利じゃり水魚すいぎょ(かいじゃりすいぎょ)の水みず行末ゆくすえ(すいぎょうまつ)、雲来うんらい末まつ(うんらいまつ)、風かぜ来らい末まつ(ふうらいまつ)、食しょく(く)う寝ね(ね)るところに住じゅう(す)むところ、やぶらこうじのぶらこうじ、パイポパイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久ちょうきゅう命いのち(ちょうきゅうめい)の長助ちょうすけ(ちょうすけ)』
が、
川かわへ落おちたんだよ!」
 やっと
名前なまえをい終いおわった時ときには子こどもは川下かわしもの方ほうへ流ながされてしまい、おぼれ死しんでしまいました。

 ところがある
日ひ、別べつの子こどもが川かわへ落おちました。
 この
子こどもは、『ちょい』というだけの、短みじかい名前なまえでした。
「みんな
助たすけておくれ! ちょいが川かわへ落おちたんだよ!」
 お
母かあさんの叫さけび声ごえを聞きいて畑はたけにいる人ひとが川かわに飛とび込こんで、すぐに子こどもを助たすけてくれました。

 そんな
事ことがあってから、この地方ちほうではどのお母かあさんも生うまれた子こどもには出来できるだけ短みじかい名前なまえをつけるようになったという事ことです。

※寿ことぶき限げん無む・・・以下いか略りゃくの名前なまえの意味いみ。

「寿ことぶき限げん無む(じゅげむ)」とは、
 
寿命じゅみょうに限かぎりがなく、永遠えいえんに死しなないという意味いみです。

「
五ご劫こう(ごこう)のすりきれ」とは、
 
三さん千せん年ねんに一いち度ど、神かみさまの使つかいが天てんから降おりてきて、地上ちじょうの岩いわを衣ころもでなでるのですが、その作業さぎょうがすべて終おわるまでの時間じかんを一いち劫こうといい、それが五ご劫こうあるので、何なん万まん年ねんもの時間じかんという意味いみです。

「
海うみ砂利じゃり水魚すいぎょ(かいじゃりすいぎょ)」とは、
 
海うみの砂利じゃり(じゃり)も、水みずにすむ魚さかなも、とうてい取とりつくすことができないため、それだけ数かずが多おおいという意味いみです。

「
水みず行末ゆくすえ(すいぎょうまつ)、雲来うんらい末まつ(うんらいまつ)、風かぜ来らい末まつ(ふうらいまつ)」とは、
 
水みずの行ゆく末すえ、雲くもの行ゆく末すえ、風かぜの行ゆく末すえには、いずれも果はてがなく、広大こうだいだという意味いみです。

「
食くう寝ねるところに住すむところ」とは、
 
衣食住いしょくじゅうを表あらわし、それらの全すべてに不自由ふじゆうしないようにとの、願ねがいを込こめた言葉ことばです。

「やぶらこうじのぶらこうじ」とは、
 
大変たいへん丈夫じょうぶでおめでたい木きの名前なまえで、春はるは若葉わかばをしげらせ、夏なつは花はなを咲さかせ、秋あきは実みを実みのらせ、冬ふゆは霜しも(しも)をふせぐと言いわれています。

「パイポパイポ・・・
以下いか略りゃく」とは、
 むかし、
中国ちゅうごくにはパイポという国くにがあって、シューリンガンという王おうさまとグーリンダイという王おう后きさきのあいだに生うまれたのが、ポンポコピーとポンポコナーという二に人にんのお姫ひめさまで、この二に人にんが大変たいへん長生ながいきをしたので、それにあやかっての言葉ことばです。

「
久ひさ命いのち(ちょうきゅうめい)の長助ちょうすけ(ちょうすけ)」とは、
 
天長地久てんちょうちきゅう(てんちょうちきゅう)という言葉ことばがあり、天地てんちが永久えいきゅうにかわらないように物事ものごとがいつまでもつづくと言いう意味いみで、長久ながひさ命いのちは、それだけ命いのちが長ながく続つづくという願ねがいを込こめて、そして最後さいごの長助ちょうすけは、長ながく助たすかる、つまり、長生ながいきできるという意味いみです。 

おしまい

 
 

 
 
 
 
 
 
 
A p p   F o r   P h o n e
  • Android
  •   
  • iOS

App 4.0 ↓
A p p   F o r   P h o n e
  • Android
  •   
  • iOS 4.3