章4-第8

章4-第8

 

聴:

 

 

イモ掘り藤五郎

 

むかしむかし、加賀山科(かがやましな)の里に、山イモを掘って生活している藤五郎(とうごろう)という若者がいました。

 藤五郎はとても気の良い男で、余った山イモは村人たちにただで配っていました。

 ある日の事、そんな藤五郎の家に、都からとても美しいお姫さまがやって来ました。
 そして何と、
「藤五郎さま、わたくしをあなたのお嫁さんにしてください」
と、頼んだのです。
 びっくりした藤五郎は、お姫さまに言いました。
「それはうれしいが、せっかく嫁に来てもらっても、家は貧乏で二人が食べる分のお米もない」
 するとお姫さまは、
「心配いりません。これがあれば、お米だってお魚だって何でも買えますよ」
と、砂金(さきん)の入った錦(にしき)の袋を藤五郎に渡したのです。
「はあ、こんな物でねえ」
 藤五郎は砂金の価値もわからないまま、山をおりて買い物に出かけました。
 そして藤五郎は山を下りる途中で、二羽の鳥を見つけました。
「うまそうな鳥だな。あのお姫さまに、食べさせてやろう」
 藤五郎はそう思い、お姫さまにもらった砂金の袋を鳥めがけて投げつけました。
 ところが砂金の袋は口が開いてバラバラになり、鳥も逃げてしまいました。

 手ぶらで帰ってきた藤五郎に、砂金を無くした事を聞いたお姫さまはがっかりです。
「まあ、あなたという人は、何という事をしたのでしょう」
 そんなお姫さまに、藤五郎は言いました。
「そいつは悪い事をしたな。だけどもこんな物、山イモを掘ればいくらでもツルについているがな」
 藤五郎はお姫さまを山に連れて行くと、山イモを掘ってみせました。
 すると本当に、山イモのツルがピカピカに輝いています。
「まあ、なんてことでしょう」
 お姫さまが山イモを沢(さわ)で洗ってみると、たくさんの砂金がとれました。
 それから藤五郎は、イモ掘り
長者と呼ばれるお金持ちになりました。
 そして村人たちは山イモを洗った沢を『金洗沢(かねあらいさわ)』と呼び、いつの頃からか『金沢(かなざわ)』と呼ぶようになったのです。

 

おしまい

 

ふりがな

 

聴: 

 

 

イモ掘り藤五郎

 

むかしむかし、加賀山かがやま科か(かがやましな)の里さとに、山やまイモを掘ほって生活せいかつしている藤五郎とうごろう(とうごろう)という若者わかものがいました。
 
藤五郎とうごろうはとても気きの良よい男おとこで、余あまった山やまイモは村人むらびとたちにただで配くばっていました。

 ある
日ひの事こと、そんな藤五郎とうごろうの家いえに、都とからとても美うつくしいお姫ひめさまがやって来きました。
 そして
何なんと、
「
藤ふじ五郎ごろうさま、わたくしをあなたのお嫁よめさんにしてください」
と、
頼たのんだのです。
 びっくりした
藤五郎とうごろうは、お姫ひめさまに言いいました。
「それはうれしいが、せっかく
嫁よめに来きてもらっても、家いえは貧乏びんぼうで二に人にんが食たべる分ぶんのお米こめもない」
 するとお
姫ひめさまは、
「
心配しんぱいいりません。これがあれば、お米こめだってお魚さかなだって何なにでも買かえますよ」
と、
砂金いさご(さきん)の入はいった錦にしき(にしき)の袋ふくろを藤五郎とうごろうに渡わたしたのです。
「はあ、こんな
物ぶつでねえ」
 
藤五郎とうごろうは砂金さきんの価値かちもわからないまま、山やまをおりて買かい物ものに出でかけました。
 そして
藤五郎とうごろうは山やまを下おりる途中とちゅうで、二に羽わの鳥とりを見みつけました。
「うまそうな
鳥とりだな。あのお姫ひめさまに、食たべさせてやろう」
 
藤五郎とうごろうはそう思おもい、お姫ひめさまにもらった砂金さきんの袋ふくろを鳥とりめがけて投なげつけました。
 ところが
砂金さきんの袋ふくろは口くちが開ひらいてバラバラになり、鳥とりも逃にげてしまいました。

 
手てぶらで帰かえってきた藤五郎とうごろうに、砂金さきんを無なくした事ことを聞きいたお姫ひめさまはがっかりです。
「まあ、あなたという
人ひとは、何なにという事ことをしたのでしょう」
 そんなお
姫ひめさまに、藤五郎とうごろうは言いいました。
「そいつは
悪わるい事ことをしたな。だけどもこんな物ぶつ、山やまイモを掘ほればいくらでもツルについているがな」
 
藤五郎とうごろうはお姫ひめさまを山やまに連つれて行いくと、山やまイモを掘ほってみせました。
 すると
本当ほんとうに、山やまイモのツルがピカピカに輝かがやいています。
「まあ、なんてことでしょう」
 お
姫ひめさまが山やまイモを沢さわ(さわ)で洗あらってみると、たくさんの砂金さきんがとれました。
 それから
藤五郎とうごろうは、イモ掘ほり長者ちょうじゃと呼よばれるお金持かねもちになりました。
 そして
村人むらびとたちは山やまイモを洗あらった沢さわを『金きむ洗あらい沢さわ(かねあらいさわ)』と呼よび、いつの頃ころからか『金沢かなざわ(かなざわ)』と呼よぶようになったのです。
 

おしまい

 
 

 
 
 
 
 
 
 
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